重度障害者 脳波で意思表示 産総研が開発

意思疎通が難しい重度の障害者が、脳波を使って「ウーロン茶が飲みたい」など500以上の選択肢から意思表示できる小型装置を、産業技術総合研究所茨城県つくば市)のチームが開発した。数年以内に1台10万円以下での実用化を目指す。

車椅子が脳波で前進・右旋回・左旋回理研など開発

進みたい方向を脳波から読み取り、その通りに動く電動の車椅子を、理化学研究所トヨタ自動車などの研究チームが開発し、29日発表した。前進、右旋回、左旋回の3種類の操作を、95%の正答率で実現した。障害者の行動範囲を広げる技術として注目される。

 研究チームは、「歩く」「右手を上げる」「左手を上げる」という3種類の動作を思い浮かべた際の脳波の違いを効率よく検出し、それぞれに対応して車椅子に「前進」「右旋回」「左旋回」の指示を出す計算システムを開発。脳波を読み取る電極を通常より少ない5個で試したところ、判別時間も数十分の1の0.1秒程度で済んだ。システムが指示を間違えた場合は、ほおを膨らませて停止信号を送る。理研BSI−トヨタ連携センターの山田整・客員研究員は「医療・介護分野に幅広く応用できるのでは」と話す。


 産総研長谷川良平ニューロテクノロジー研究グループ長らは、人が何かを見つめると特定の脳波が強まることに着目。コンピューター画面で点滅する選択肢(イラストと文字)を見せながら脳波計で脳波を測る仕組みを作った。

 外出先でも使えるよう、脳波計は縦5.5センチ、横3.3センチと名刺の半分程度で重さ24グラム。使う人の後頭部に装着し、画面上で選びたい選択肢を見つめて点滅回数を数えると、脳波がスイッチとなり選択肢を選べる。

 選択肢は3段階で計512通り。第1段階は「飲食する」「移動する」「気持ち」など8分類あり、各分類に入るとさらに細かい選択肢が選べる。例えば「飲食する」→「飲み物」→「ウーロン茶」と選べば、画面上に現れたキャラクターが「ウーロン茶を飲みたいです」としゃべる。

 体や言葉が不自由で意思疎通が難しい人は、パーキンソン病や筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の患者だけで約14万人にのぼる。健常者10人で試験したところ、この装置で意思の6〜9割を正しく読み取れた。今後、ALS患者の協力を得て精度を上げるという。【高木昭午】


引用   毎日新聞